大会テーマ「心理劇の成熟と新しい展望」

【第2号通信 ご挨拶】

 第1号通信では、第30回大会の隠れたテーマは「舞台」であるとお伝えしました。実は本学の6号館には、日本心理劇学会で長く常任理事をお務めになった武藤安子先生が、本学に児童学科を創設なさるときにお作りになった心理劇専用の舞台があります。本学会で前の期に常任理事を務められていた小原敏郎先生や、本大会の運営委員を務めておられる木村秀先生をはじめとする、本学家政学部児童学科の先生方の御厚意で、大会初日の開会式前に、プレ行事として、舞台の見学時間を設けることができました。御都合のつく方はスケジュールを調整して、早めにおいでいただき、ぜひご覧になってください。
 若い会員の方々のなかには、心理劇の舞台を見たことがない方もおられるかと思います。ギリシャ神話では、チャンスの神様には前髪しかないため、その前髪を掴みそこねると、どんなに後悔しても後になって好機を捉えることは難しいといわれています。ご承知のように、サイコドラマの黎明期には、3段の同心円状の木造の舞台で劇を演じることが重視されましたが、現在では、そのような装置を用いることは、絶対条件ではないと考えられています。私自身も監督として様々な場所で心理劇を行っており、心理劇専用の舞台がないことに不自由さを感じることはありません。しかしながら、実際に同心円状の舞台の上に立つと、この舞台がグループをサープラス・リアリティの世界にいざなううえで、優れた装置であることを感じます。見学の際には安全・安心に配慮しつつ、モレノの舞台に関する構想に想いを馳せていただけると有難いです。
 話は変わりますが、第2号通信は全19ページで構成されております。本学会のある会員の方が「これを読むだけで学会に行った気分になるね」と言ってくださったので、第2号通信も本大会のプレ行事のひとつとして捉えさせていただきたいと思います。郵送の場合には大量の文書を入れることは困難ですが、本大会ではメール送信を基本とさせていただきましたので、講師やシンポジストの方々にご協力をお願いして、コメントを記していただきました。発表者の方々の発表要旨も掲載しました。ぜひお読みください。この通信は大会ホームページにも貼り付けましたので、万が一にもデータを紛失した場合には、ダウンロードしていただけます。
 最後になりますが、第30回大会の円滑な運営のために、ご協力いただいているすべての方々に、心からの感謝を捧げます。オンライン上で大会発表の申し込みが始まった当初は、申し込みが少なく心配しました。いつも適切な助言をくださる横山太範理事長に相談すると、「〆切前に提出する人が多いから大丈夫だよ」とのご助言をいただきました。けれどもそれでも心配で、何名かの方に発表の打診をいたしました。すると「もともと発表の予定だった」「前向きに検討したい」というご返事を即座にいただき、本学会の底力を感じました。最終的には全部で18件の発表申請をいただき、安堵しております(口頭発表:9件。ワークショップ発表:9件)。お忙しい時間を割いて発表の構想を練ったうえで、申し込みをしてくださったベテランの先生方には、ありったけの敬愛の気持ちを送ります。試行錯誤しつつ研究を推進し、勇気をもって発表申請をしてくださった若い先生方には、最大限のエールを送ります。すべての発表会場がいっぱいになるように、多くの会員の皆さまの早い段階での参加予約をどうぞよろしくお願いいたします。


                                                       日本心理劇学会第30回大会大会
                                                             共立女子大学教授
                                                                安藤嘉奈子

【第1号通信 ご挨拶】
 日本心理劇学会の大会は、本年度で第30回を迎えます。大会長として、その記念するべき大会を開催することとなり、責任の重さを痛感する一方で、自発性・創造性のスイッチが全開になったようなワクワク感を味わっております。節目の大会では、本学会の誕生・発展・成熟の過程を客観的に見直し共有するとともに、その成果を共感的に分かち合いたいと思っております。さらに、近い将来と遠い未来に目を向け、本学会の組織としての発展可能性、心理劇の学術的な進歩、心理劇を用いた社会貢献の推進、などを展望したいと考えております。
 ところで、12月の開催が通例の大会を、1月に開催することとなった背景には、大会テーマに重なる隠れたテーマを「舞台」としていることがあげられます。心理劇において舞台は、主役をはじめとする参加者が、喜怒哀楽の感情を解放する場として捉えられています。本学の古びた講堂は、現在では部外者には貸し出されておりませんが、昭和の頃には、音楽コンサートの聖地として広く知られておりました。歴史的に意義のある舞台で、「全員参加型」のシンポジウム・心理劇を行いたい、という想いにつき動かされた私は、講堂使用について本学事務局に何度も相談いたしました。学内行事を優先して予約が行われるため、予約は難しいかとあきらめておりましたが、あるとき急に「1.12.」があくという幸運に恵まれました。
 かつて数々のスーパー・スターが、音楽の力で、観客をサープラス・リアリティの世界にいざなった舞台には、何か不思議な力が潜んでいるかもしれません。けれども、古びた舞台を錬金術的な出会いの場に変容させるためには、参加者の皆さまの助けが必要です。お一人おひとりが主役になったつもりで、心理劇や心理劇を対象とした学会の在り方について見つめてゆきませんか。
 さらに、楽しい祝祭の機会とする意味では、新型コロナウイルス感染症の流行によって、ここ数年の年次大会では行うことのできなかった、懇親会の開催を予定しております。是非御参加ください。
 それに加えて本大会では、はじめて「表彰制度」が適用されます。2日目の最後に表彰式を設けますので、フィナーレを華やかに飾る意味で、たくさんの会員の方々の「継続発表賞」「オンリーワン賞」のご申請をよろしくお願いいたします。なお、オンリーワン賞は、口頭発表・ワークショップ発表を行った方のうち、希望する方に授与されますので、とりわけ若手の会員の皆さまの積極的なご発表をお願いできると有難いです。
 会員の方のご参加を心からお待ちしております! よい機会かと存じますので、非会員の方も気軽にご参加ください!!
                                                     日本心理劇学会第30回大会大会長 
                                                            共立女子大学教授 
                                                               安藤嘉奈子